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泊まれる近代建築 TSUGU京都三条 by THE SHARE HOTELS

1914年に建てられた近代建築「日本生命京都三条ビル」。登録有形文化財であるこの建物を活用し作られたのが、今回ご紹介する「TSUGU 京都三条 by THE SHARE HOTELS(以下、TSUGU 京都三条)」だ。2019年のオープン以来、多くの観光客や外国人を受け入れてきたTSUGU 京都三条からは、リーダーを務める西村望実さんにお話を伺った。


登録有形文化財を活用したTSUGU 京都三条とは

ーーまずはTSUGU 京都三条がどんなホテルなのかお教えください。


TSUGU 京都三条は全国に9店舗展開するTHE SHARE HOTELSグループのひとつです。「地域との共生」を目指すホテルブランドとして各地の文化を担うプレイヤーたちと共にホテルをつくり、地域に開いた場づくりをしています。TSUGU 京都三条では築100年以上の近代建築を受け継ぐホテルとして、歴史ある建物を最大限活かした空間をお楽しみいただけます。「地域との共生」のもと、館内にはお客様がシェアしてお使いいただけるリビング・キッチンスペースを設け、ご宿泊者様同士のコミュニケーションが生まれやすい環境をお届けしています。また、1階ロビー横では伝統工芸品を販売するなど、地域の文化に触れていただけるような工夫をしています。


以前はドミトリーなどの相部屋があったためそういったシェアの意味もあったんですが、現在は完全個室で運営をしております。


ーーTHE SHARE HOTELS自体は全国にホテルを展開されているかと思いますが、京都三条を選んだのはなぜでしょうか?


TSUGU 京都三条はホテルの一部に、築105年の登録有形文化財である旧日本生命京都三条ビルを使用しています。伝統ある建物をリノベーションして保存していくことで、より特徴的なホテルになると考え、私たちは京都三条でホテルをオープンしました。


近代建築をホテルの一部に使用しているのは、全国にあるTHE SHARE HOTELSグループのなかでも函館と京都三条のみ。他のホテルはオフィスビルなどをリノベーションして作ってはいるものの、近代建築を使っているところは珍しく、京都三条は数あるホテルのなかでも特徴あるホテルと言えます。

近代建築の良さを守り、より楽しんでいただけるホテルへ

(ジュニアスイートの部屋は有形文化財のなかに泊まれる唯一の部屋)


ーーTSUGU 京都三条は近代建築である旧日本生命京都三条ビルを使用していますが、元々この建物に対してどんな印象をお持ちでしたか?


旧日本生命京都三条ビルは、東京駅を設計した辰野金吾さんと片岡安さんという有名な設計士が設計されています。地域の皆さんが大事にしてきた場所であると同時に、馴染みのある場所なのだろうと感じていました。


ーーそんな近代建築を活用しホテルをデザインするうえで、大切にしたことはありますか?

TSUGU 京都三条は、建築デザイナーである関祐介さんに設計をしていただいており、登録有形文化財の石張りのイメージを崩さないよう、館内はコンクリート調のデザインを施しています。外観の設計時には、京の三条まちづくり協議会の方にもご意見をいただき、ホテルの外観が三条通の街並みに溶け込むようご相談もさせていただきました。

TSUGU 京都三条の設計で特徴的なのは、例えば4階にある共用LIVING+KITCHENの窓。この窓はもともと壁だった部分をくり抜いて作っているのですが、お客様がホテルのなかから登録有形文化財の尖塔が見えるようにリノベーションをしています。

京の三条まちづくり協議会の皆さんが主催されている近代建築ウィーク(近代建築に興味ある一般の方向けに、三条通の近代建築を紹介する街歩きツアー)では、そんな窓から見える近代建築もお楽しみいただいているのですが、参加者の皆さんに大変ご好評いただいております。

その他、登録有形文化財の中に泊まれるジュニアスイートのお部屋もご用意しています。当ホテルのなかで、唯一築100年の登録有形文化財のなかで過ごせるお部屋となっています。

(ホテル共用部から見える近代建築の尖塔)


京都の中心部で歴史と文化を感じてほしい

ーー2019年のオープン以来、TSUGU 京都三条にはどのようなお客様がいらっしゃるのでしょうか?


海外の方が7割と多いんですが、年代は20代からご年配の方まで幅広い方にご利用いただいております。当ホテルで特徴的なのは、お客様のなかに建築好きな方が多いということ。近代建築のファンの方もいれば、デザイナーである関祐介さんのファンの方もいます。内装をシンプルでスタイリッシュな印象にしている影響か、感度の高いお客様が多いと感じます。


TSUGUの系列ホテルとして、京都中心部の北に位置する丸太町にも「RAKURO 京都」というホテルがあります。RAKURO 京都は、京都御所の近くにあるため自然を求めて利用される方が多いのですが、TSUGU 京都三条に来られるお客様は、より京都の文化を求めている方が多いように感じます。


ーーTSUGU 京都三条への宿泊では、どのようなことが楽しめるのでしょう?


ホテルは京都のメインエリアに位置するため、どこに行くにもアクセスよく楽しむことができます。ホテルから京の台所と呼ばれる錦市場までは徒歩6分程度ですし、京都らしい観光地も周辺には数多くあります。


もちろん三条通に並ぶ近代建築を楽しんでいただくこともできますが、三条通は建築だけではない街全体に価値があるものだと思うので、京都の歴史や文化を感じながら旅を楽しんでいただきたい方におすすめです。


建築を通してホテルと地域の魅力を届けたい

ーー2019年のオープン以降、地域との関わりという点においてはいかがでしょうか?


正直オープン以降、新型コロナウイルスの影響もあってあまり地域の皆さんと交流ができませんでした。ようやく最近になり、KG+(これから活躍が期待される写真家やキュレーターの発掘と支援を目的とした公募型アートフェスティバル)という写真展イベントに参加したり、近代建築ウィークや京都モダン建築祭(普段は非公開のモダン建築が日時限定で特別に公開される建築一斉公開イベント)に参加することができるようになりました。


京都モダン建築祭のときには、2日間で700名近い方が来てくださり、私たちもようやく地域の方と交流ができたことを嬉しく思っています。


ーーお客様に地域の魅力を伝える上で、スタッフの皆さんが取り組んでいることはありますか?


当ホテルでは「ローカルガイド」というご宿泊者様だけが見られる専用ページをご用意しています。その中では、スタッフがホテル周辺のおすすめスポットを紹介しているのですが、そこに載っているお店はスタッフが直接掲載許可をいただいており、お客様にご紹介すると同時に、私たちも地域の方とコミュニケーションをとるよいきっかけとなっています。


当ホテルはリピーターのお客様が多いのですが、京都にいろいろなホテルがあるなかで、わざわざ選んでいただけるということは、このエリアや建物に魅力を感じてくださっている方が多い証拠だと思います。


ーー最後に、今後三条通でやっていきたいことがあれば教えてください。


もっとイベントに参加していきたいです。私たちのホテルは、登録有形文化財をリノベーションしていることでたくさんの方々に注目していただいていると感じますが、「気になっていたけどなかなか入れなかった」という声も多くいただきます。今後は新型コロナウイルスの影響であまり参加できなかったイベントにも積極的に参加し、近代建築の魅力や認知度はもちろん、ホテルや三条通の魅力も届けていけるよう取り組んでいきたいです。

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